75% ハイエンドキーボード Mode Sonnet を日本語配列で組み立てる
人生初のはんだ付けを行って本気のキーボードづくりに取り組んだ。
スタート地点
UP-MKGA75 + MDA Future Suzuri にもそこそこ満足していると既に以前記事にしたが、いわゆるハイエンド系キーボードの打鍵音にチャレンジしたい思いがあり、業界でも珍しい 75% 配列で企画されている Mode Designs の Sonnet を購入した。
同社はアメリカの企業で、スペックというよりデザイン性・工芸品のような作りを目指しつつハイエンドすぎない価格設定で商品展開をしている、自分にとって最高の方向性だ。
元々は界隈で伝説的存在の ai03 氏 設計の Vega に関心を持ったところから始まったが、65% 配列は自分の中では妥協し難い点で悶々としていたところ、検索でたまたま見つけたのがこの Sonnet だったというわけだ。
構成
- キーボード本体
Mode Designs - Sonnet - オプション構成
PE Foam / Aluminum Plate / Top Mount - キースイッチ
Everglide Aqua King 37g - スタビライザー
Durock V2 PCBマウント - キーキャップ
サリチル酸 - Acid Caps JP
キーボードはできるだけ静かな方がいいと思っているが、折角のハイエンド系で全く音を殺すのももったいないと思い通常のリニアに。軸ブレが皆無で押下圧の軽いということでキースイッチは Aqua King。キーキャップは王道デザインで黒基調の Acid Caps JP にした。Cherry プロファイルが一番打ちやすいし、2色成形の PBT となれば耐久性もさわり心地も完璧だ。
内容物確認
人生初のキーボードキット (自分で組み立て) に加え、人生初のはんだ付けということで億劫になり、届いてから取り掛かるまでに 3週間もかかってしまった。
実際取り掛かるとさほど難しいものでもなかったので、自分同様に抵抗感を感じている人がいたら気が楽になるように写真をたくさん貼っていく。
届いたものは以下の通り (左手前から右奥の順)
- 重り (ブラックを選択)
- アクセントバー (ゴールドを選択)
- ドーターボード (分岐基盤 - USB コネクタ)
- PCB マウント用クッション材
- ネジ
- ケース (上ブラックに下ゴールドを選択)
- ピット交換式ドライバー (必要な径・口金のピットが付属)
- 潤滑剤シリンジ (Krytox 205g0 入り)
- ゴム足
- PE フォーム ← オプション品として追加
- Solder PCB
- FR4 プレート ← オプション品として追加 (後でアルミと迷えるよう同時購入)
- アルミニウムプレート
部品点数に面食らうが、組み立て始めるとかなり素直な設計で迷うことはない。
組み上げ開始
配列を決定
写真を忘れたが、ISO エンターならここ・ANSI エンターならここ、というように配列を選べる箇所は基盤に印字があるので、ストレスフリーで作業できる。選択肢は以下の通り:
- R2 列 (数字列)
Op. 1: 2U Backspace
Op. 2: 1U キー + 1U Backspace ← 今回選択 - R3-4 列
Op. 1: 1.5U カッコ開く + 2U Enter
Op. 2: ISO エンター + 1U キー ← 今回選択 - R5 列
Op. 1: 2.25U Shift
Op. 2: 1.25U Shift + 1U キー ← 今回選択 - R6 列 (最下段)
Op. 1: 1.5U + 1U + 1.5U + 7U Space + 1.5U
Op. 2: 1.25U + 1.25U + 1.25U + 6.25U Space + 1.25U + 1.25U ← 今回選択
Op. 1 と Op. 2 はそれぞれ VIA で設置するため、混在しても良い。また選択肢があるのは Solder PCB のみで、Hotswap PCB を選択するとすべて Op. 1 の ANSI 配列になる。
はんだ付けを開始
一度はんだ付けすると取り外しは難儀するので (後述)、ここでしっかりと配列と足を二重三重に確認すると良い。はんだごては定番、白光の FX-600、コテ先は T18-D16、はんだは goot の SD-62 にした。
温度は 350 °C が良いようだが、FX-600 の温調設定は 320 °C の次が 370 °C だったので、320 °C 固定で 2-4 秒基盤予熱 → はんだ塗布して 1-2 秒加熱 のペースで作業した。
はんだはあっという間に冷えて固まるので、今回びびって 5 分置いてから組み上げに移ったが、1 分も待てば十分だったのかもしれない。
最終組立
完成
ついに完成、ここまで都合 3 時間くらいだ。チュートリアル動画を見たり、はんだのやり方を再確認したりなどで相当慎重にやったので、手順がわかった今もう一台組むならば実作業は準備含めて 1 時間もかからないだろう。
写真では分かりづらいが、今まで使っていた樹脂筐体のキーボードと同様にブラック色とは言え、金属と樹脂では重厚感が違い気品を感じる。
触ればその質感差は自明で、普通のキーボードではあり得ない高級感を感じられる。参考までに重量で見ると UP-MKGA75 改 が 990 g に対し、Mode Sonnet は 1585 g もある。
高級キーボードは海外取寄せの US 配列ばかりの中、このように ISO 配列を用意してもらえるのは有り難い。大満足だ。
あとがき
実際に使ってみて、打鍵音の方向性が自分の想像通り静かめな小石サウンドで安堵している。ケースの外枠も薄くてシルエットが良い。Acid Caps JP も、購入前の画像からは失礼ながら普通すぎるデザインと思えていたが、実物を見ると色合いも質感もさすがベテランの企画だと感じる。良いものを買った。
はんだ取り
実はこの後一度分解してはんだ付けをやり直した箇所がある。はんだ不良ではなくキースイッチの不良だ。Aqua King は 5ch でも書き込みがあったが、軸ブレをなくすために軸とケースがカツカツで、製造誤差によっては押下後の戻りが如実に引っかかってしまう。
はんだ付け・キーキャップ組み立てまで気付かずに作業してしまったのだが、同様のキースイッチを利用される方は、はんだ付け前にかならずタッチテストを行うことをおすすめしたい。念のため購入しておいたはんだ吸取線で必死に取ったが、コツを掴むまで基盤の穴に入り込んだはんだが取れず四苦八苦した。追いはんだを学んでからだいぶ楽になった。
大変満足だがはんだ付けを会得たことで変な沼が広がりそうでちょっと怖い。
日本語配列の VIA での設定
VIA では自由に文字配列を設定するわけではなく、規定のキーを当てはめていく形で配列していくことになる。これも発見なのだが、パソコンが US 配列 として認識するか 日本語配列 として認識するかによって「割り当てたキー」の解釈が変わるようだ。
例えば下図では「2@」となっているが、これは VIA からは US 配列 の視点でどのキーを割り当てたかということになり、日本語配列として認識した状態では「2"」と実際にはタイプされる。
ということで誰も参考にしないかもしれないが日本語配列として認識させるには下記のイメージ。唯一アンダースコアが左に吹き飛んでしまうが、ISO 配列の枠内では仕方がない。