ムダな行動力

写真とオーディオ、時々フランスネタとフライトシミュレーター

マイノリティーはつらいよ - 夢の日仏キーボード構想

変則 JIS 配列に AZERTY の印字を追加

すっかりキーボードの事ばかり綴っているが、頭の中もキーボードでいっぱいの日々が続いている。自分でも重症だと思う。

既製品をそのまま使う世界から自分で改造する世界に足を踏み入れて以来、「本当はこうだったら良いのに」が実は出来るかもしれないと発想が膨らんでしまい自縄自縛状態が続いている。

人間、足るを知るという言葉があるように現状に満足する発想が幸せのもとだと重々承知しつつ、生来の凝り性と「毎日使う仕事道具」という魔法の言葉が狂気に導いているのだ。

こうだったらいいのにと思う配列

過去記事で散々試行錯誤していたように現状の UP-MKGA75 + MDA Future Suzuri + Durock Silent Linear Dolphin にも 90% 満足している。

気持ちもう少しキースイッチの軸ブレが減ってもいいとか、ドライバーが安定してほしいとかは置いていといて配列としては下記が「こうだったら良いのに」ポイント。

  • End キーがなくなって意外と困っている
    (Teamsチャット中に中間の記述を修正して文末に戻る時など)
  • 変換と無変換を 1.25U 程度まで若干大きくしたい
    (現状の 1U だと小さすぎて横の Alt に当たってしまうこと多々)
  • 右上はノブよりキーにしたい
    (自分の場合ボリュームはアンプ本体だし、欲しいズームは割り当てられない)
  • 最下段の右側にメニューキーが欲しい
    (Excel などでマウスを使わず右クリックメニューを出したい)

ほぼ満足しているが上記ポイントが改善できたら真の満足が…

マイノリティはつらいよ

配列を変えるということはキースイッチの配置を変えること、すなわち PCB (基盤) を変えることになる。自作キーボードの世界は奥深く、自身で基板設計をしたものを公開、あるいは基盤として販売、もしくはケースなど一式でセット販売している例が探せば見つかる。日本語配列もあり、JP60 や TH60JP などが代表例か。

だがしかし。

彼らの多くはエンジニアなのだ。開発の主眼はコード記述への最適化になる。そしてある程度自身の環境だけで作業をするようだ。またプログラムの世界は圧倒的にアメリカ一強である。結果として概して開発の方向性は下のようになるようだ。

  • US 配列 = ANSI 配列
    (自環境における合理性に最適化できる)
  • 運指量の最小化
    (60% 配列 あるいはそれ以下の変則配列)
  • ガジェットチックなひねりでアクセントをつける
    (ノブだったり画面だったり個性を出す)

自身の求める方向性は下記の通り。

  • 日本語配列
    (会社支給のラップトップと交互に使って違和感がない)
  • 75% 配列
    (F2 / F4 / F12 などのファンクションキーが単押しで入力できる)
  • オーソドックな機能と上質な製造精度
    (見た目はシンプルでミニマルであって欲しい)

ということで微妙に一致せず。身の回りの企画職・マーケティング職を見渡しても PC 環境回りに熱心な人というのはあまり多くなく、自分が圧倒的マイノリティである点を痛感する。ニーズがないところに商品はないのだ。

US 配列と JIS 配列、そして ISO 配列

ということで自作・カスタム・既製品を問わず、世の高級キーボードは US 配列だらけであるし、日本の自作界隈のニーズも上述のように US 配列が中心のようだ。それ自体は道理だし仕方がない。

外国文化が専門の自分が文章で虚しく嘆くとすれば、世の有象無象のまとめブログや YouTube 動画 だ。US 配列こそが世界の標準で JIS 配列が歪であるとコピペのように (実際発想の起点がコピペ的検索であることも多いのだろう) 主張している者がいかに多いか。

mechkeys.com より引用

日本でアクセスしやすい外国情報となると英語、特に米国の情報に集中しがちだが、世界は広く、同じ英語圏でも英国は ISO 配列の UK 版だったりする。欧州各国は概ねすべて ISO 配列であるし、スペイン語ポルトガル語圏の南米も ISO 配列で、ロシアも ISO 配列。アラビア語圏は ISO 配列と US 配列 が入り乱れる。逆に中国・韓国・東南アジアではネットで調べる限り US 配列をベースにしているものが多そうだ。

実際、留学のため人生で初めて海外 (フランス) に出た時、キー配列が QWERTY ですらなく、数字も Shift (現地では Majuscule) キーを押さねば打てないと知って絶望したものだ。配列が違うのには é やら ô やら ö やら、その地域独自の文字を打つためという背景がある。

これ程までにキーボード配列は各国様々なのだから、US 配列が至高で JIS 配列が異端であるというような、「日本オワコン」論に帰結させるのは安直すぎるように思う。

フランス語の AZERTY キーボード - www.logitech.com より引用

自分自身で設計するなら…

話が寄り道したが、要は JIS 配列を正としながら、ギリギリの 75% 設計を見出したい。

JIS 配列で思うのは、自分にとって不要なキーもそこそこあるということだ。

  • 「かな」キーは使うことがない
  • 右 Ctrl はほとんど使わないし、いざなくても 左 Ctrl で事足りる
  • 右 Shift も時々使うが、本当はいらないかもしれない

UP-MKGA75 のキー配列は長いスペースの横に 1U がギュッと並ぶ

もし不要なキーを減らしていけば Zoom75 のような US/ISO 両対応基盤にはまらないかと思ったが、それは流石に楽観的すぎたようだ。

  • 変換キーと無変換キーは欲しい
    (しかも親指で打ちやすいよう、スペースは短くしたい)
  • 右 Alt は後述のフランス語で使うのでほしい
  • 欲を言えば メニューキーが欲しい

となると、最下段に Ctrl と Alt しかない ISO 配列ではキー不足で、どの道独自基盤コースまっしぐらである。では好きにしてしまえということで、夢のキーボードを作ってみる。

最下段はキーキャップの流用性も鑑みて 1.25U に統一した。アンダースコアがあらぬところに飛んでいってしまったが、Shift の真横ならすぐ打てるので良いことにした。これなら今使っている 75% キーボードと同サイズで完璧だ。

最大限 ISO 配列 に配慮しつつ、最下段だけ好き放題するとこうなる

左 Shift を小さくして ISO 配列風にしたのは、時々打つ必要があるフランス語を鑑みてだったりする。「<」と「>」がそれだ。

ということでキースイッチの配列そのものは上記のままで、フランス語の印字をキーキャップ前面に追加してみた。あくまで印字のみなので悩んでいる基盤ではなくキーキャップの問題だが、絵にすると何か作ったような気がして面白い。

AZERTY 切り替え時の印字を加えて自分専用キーボードの完成

設計に必要なステップ

ここまで検討したからには物にしたい。KiCad というフリーソフトで案外簡単に回路設計が出来るらしい。しかも設計ができれば Web から深センにちゃちゃっと発注もできそうだ。物理的な設計や基盤制作など自分とは違う世界のものだと思っていたので、さらに変な希望が湧いてきてしまった。

自分の求める配列なら既存の US / ISO 配列のケースが流用できるだろうから、関門は PCB だけなのだ。今年はもしかしたら人生初の基板設計・基盤発注をしてしまおうか…。

参考文献

 

おかしいな、GW の写真の記事を書こうとしたらぜんぜん違うテーマになってしまった。次回こそは写真たっぷりのポストに…。