S1 から LUMIX S5II へ (S1 S5II 比較)
4年ほど使ってきた S1 無印からちょっと前に話題になった S5II へ移行した。
移行したと言っても S1 はまだ手元に残している。しばらく使ってみて完全に S5II 一本に行くか判断しようと思う。
S1 を回想
2013年に m4/3 の GX1 からカメラを始めて GX7、GX7mk2、GX9 (海外版 GX7mk3) と使ってきて、2020年に初のフルフレームとして購入したのが S1 だった。GX9 とパナライカレンズの組み合わせの色合いが好きだったので、S1 でも同じ出方なのが気に入った。
余談だが、昨今ではマーケティング合戦の結果センサーサイズが全て、フルサイズにあらずんば一眼にあらずといった雰囲気があるが、マイクロフォーサーズの写りは馬鹿にできない。下は旅行先のスペインのバルで撮った写真だが、室内手持ち ISO 200 の 1/250 秒でこの描写・このブレなさである。同じことは APS-C にも言えると思う。
その中でも GX9 を後輩に譲って S1 に移行したのは、やはりフルフレームの世界がどんなものなのだろうと思ったからに他ならない。マーケティングの犠牲者である。この風潮を作った SONY を恨む(笑)。
Lマウントはデカい重いと言われるがまさにその通りで、ちょっとカフェに寄る時に持ち出す、という気分にはならない。一方で今まで m4/3 の気軽さからなんとなく撮ってきたのが、「いかにも」なゴツい見た目になったことで強制的に真面目に写真に向き合うこととなった。ドでかいカメラを構えておいてド素人、では恥ずかしい気分になったのである。
で、確かに違いはある。ボケ量がすごい。105mm とはいえ F4 でこのボケ方だ。
また高感度耐性が上がった。こちらは望遠を買ってすぐ伊丹のデッキから試し撮りした時の写真。なんと ISO 12800 である。GX9 では 3200 まで上げればもうボロボロだが、S1 なら 3200 から若干色情報が減り始め、6400 から徐々にノイズが乗り、12800 だとザラザラして抜けが悪くなる。でもスナップなら 12800 でも十分実用なのが衝撃だった。
こちらもパリのレストランから。ISO 12800 でこの描写。
S1 と M4/3 を比較するなら同じくフラッグシップの G9 でないと怒られそうだが、とは言えこの S1 でどっぷりカメラの沼に落ちていった。このサイズのカメラを構える以上、液晶モニターじゃなくてファインダーを覗いて撮ることになるが、576万ドットEVF は物凄く、必死に見てもドット感が皆無だった。あとは EVF にありがちな遅延や色の悪さが全くない。むしろ EVF の方がどこか綺麗に見えることもあり、覗き込んでいるうちにシャッターを切りたくなる不思議なカメラだった。
S1 と S5II を比較して
S1 には大満足だったわけだが、AF 性能がいまいちでカメラの動作を勉強させられるカメラでもあった。特に AF-C で動体を追う時に見失いがちで、範囲指定をしたり1点フォーカスにしたり、近距離AF/遠距離AF を Fn ボタンに割り当てたりと、ちゃんと使いこなすとちゃんと写る、という玄人好みなところがあった。おかげで(?) MF の腕が上がったような気がする(笑)。
で、S5II である。S1 の抜群のホールド感、チルト液晶、高精細 EVF、肩液晶を失うかわりに軽量と像面位相差AFを得るという結構悩ましい変化である。特にチルト液晶はさっと猫目線で地面スレスレから撮るなどの際にスムースで本当に気に入っていたので、今流行りのバリアングル液晶になるのは相当悩ましかった。ということで1点ずつ比較をば。
ホールド感
手持ちのレンズがデカ重 S PRO レンズばかりということもあり、S1 よりだいぶ悪化する。サイズと言うより S1 の 1,021g に対して S5II が740g と 281g も軽いので、S1 で (重いけれど) バランスよく持てていたものがトップヘビーになったことが大きい。GX シリーズの感覚を思い出した。これは慣れたらなんとも思わなくなるかも。あとは売っちゃった 24-105mm や 50mm F1.8 とならとてもバランスが良い。そりゃそうか。
- LUMIX S PRO 50mm F1.4
- LUMIX S PRO 16-35mm F4
- LUMIX S PRO 24-70mm F2.8
- LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.
チルト液晶
最大のネックだったが、まあなんとか慣れた。雑に持っていく時にバリアングルを逆向きにして液晶を守れるのも意外なメリット。あとは伏せておくことで手抜きショットでもちゃんと EVF で撮るようになるとか。
いや、でもやっぱり選べるならチルトがいいな。光軸とずれるのがとても気持ち悪い。世の中動画動画って言うけれど、YouTuber 以外そんなに一眼で動画撮ってるのかなあ。S1II では絶対チルトにしてほしい。自撮りする重さ・サイズじゃねーし。
EVF (ファインダー)
S1 の超お気に入りポイントの一つ 576万ドットが 368万ドットに落ちた。これは意外と大丈夫だった。ぱっと見では十分綺麗。改めて 576万を覗くとやっぱり一皮むける感はあるが、368万も単品では十分かも。
肩液晶
かっこいいおまけアイテムと思っていたら、案外無意識にバッテリーのインジケーターと残り枚数を見ていたことに気が付いた。でもなくても大丈夫。
重量
281g の重量差は想像以上にでかかった。持ち歩いたときの疲れ具合が違う。あと撮るか分からない時にカバンに入れる時の「うーんどうしよっかなー、でも入れとくか!」になる頻度が増えた。Canon や SONY が最近必死に小型化してるのは正義ですよね。特にSONY の多少画質を犠牲にしてでも小型軽量する方針はちょっと前まで好きじゃなかったんだけれど、最近は逆にそれこそがイノベーションだよなと思い始めた。
AF 性能
これが今回乗り換えた最も大きい理由。まだハードには試せていないものの、S1 で時々あったウォブリングしてフォーカスが合わない問題がなくなったのと「よく見たら瞳にフォーカスあってなかった」問題が減って打率が上がった。大満足。
AF-C では測距点が小さい四角の集合で表されてちゃんとどこに合っているかが分かるようになったのと、追随速度が上がって安心感が増した。特に前後方向の動きは S1 では外してしまうケースが多かったが、S5II ならちゃんと連射でも合っている。
パナも像面位相差採用で他社同等と言えるかと言うとちょっと微妙。AF-S では完璧。AF-C では Canon R8 や SONY a7iv 程の食いつきがない (Nikon は試していない)。最初の合焦は速いのだが、コンティニュアスの間隔が広く、ズレてくる感じ。これはエンジンの性能なのかな。もう一歩頑張って欲しい。価格帯が違うと言えばそれまでか。
とは言え今のところそのせいで撮り損ねたことはなく感覚の問題。速い動体を撮れていないので今度伊丹に行ってこよう。
その他
JPEG/RAWともに S1 より彩度が気持ち高めに出るようになった。S1 のちょっと暗めで自然な色が好きだったのでまだ様子見。
また、S1 はいつも電源 ON から即起動していたが、S5II は久しぶりに ON にする時 1秒以上待たされる。最初は故障したかと思った。頻繁に ON/OFF している時は S1 同様瞬時に起動するので内部でスリープ処理を入れているのだと思われる。
シャッター音に関しては S1 が至高の柔らかい音質だったのに対して S5II は 並。価格帯が違うから仕方がない。R8 も a7iv も全然いい音じゃないし、このレンジで音質云々言うのは野暮かもしれない。
そして全く盲点だったが S1 と S5II はバッテリーの形状が異なる。買い直しである。
総合して
やはりフラッグシップとエントリーの差がスペック以外の部分に現れるものの、写真の肝となる 画質・AF・は順当に進化し、EVF も想像以上に良く、同じ 24 MP の写真機としては S1 を超えたと言える。静止画のみのユーザーでも乗り換えを十分検討していいし、動画もする方なら迷う点はないだろう。
S1 は極上の EVF・シャッター音・Fn ボタン数・S PRO レンズ群との重量バランスを考えると、なんとなく心残りが合って売れず手元に残している。プロじゃないから2台持ちすることもないし、どこかで決心して売ってしまおう…。S1II がでたら買ってしまいそうだ…。