ムダな行動力

写真とオーディオ、時々フランスネタとフライトシミュレーター

ペンタブは エクセル/パワポ芸人の業務使用に耐えうるか

Wacom Intuos Medium Wireless (TCTL6100WL)

絵を全く描かないビジネスユースでペンタブは果たして効率的なのか。

最近ふとペンタブを使い始めた。業務は任意出社 (フルリモート) なので頻繁に Teams で会議をする。昔やっていたホワイトボードに図示して議論という習慣はすっかりなくなり、パワポに四角形やテキストボックスを乱暴に配置して後は言葉でフォローという文化が定着したと思う。

小学生の頃からなんとなくペンタブに憧れを持っていた。インターネットに触れるきっかけになったのは友人に誘われた「お絵かき掲示板」だったから昔から気にはなっていたのだ。

ググっても、普段イラストを描く人が仕事「でも」使ったパターンか、ペンタブを売りたい企業・個人がマーケティング的にアピールしているパターンしか目立った記事が見つからなかったので、一オタクとして身をもってレビューしたい。

前提条件

使用環境

  • 27 インチ 4K ディスプレイ 2枚 (左側に縦向き、正面に横向き)
  • ペンタブ移動範囲は両画面全領域に設定
  • Windows 10 Pro 環境、Windows Ink は ON
  • Wacom Intuos Medium ワイヤレス版 (有線も無線も使用)

目的

  • 会議で手書きメモを用いて円滑に打ち合わせがしたい
  • 日常の PowerPoint / Excel 作成作業がさらに楽になればベター
  • もっと言うとマウスを完全にペンタブに置き換えられないか

キーボード下にペンタブを配置、右にバックアップ用のマウス

使ってみた感想 (3日使用)

ポテンシャルを感じるがハードユースには慣れ親しんだキーボード+マウスが早そう。但し左手デバイスを追加すると化ける可能性がある。

フリーハンドでの追記や構想の図示には抜群

既に出来ている資料に手書きでコメントするケースや、Teams で会話しながら白紙のキャンバスに図を書いて補佐したり資料の完成形を議論するケースでは存分に威力を発揮。マウスより圧倒的に早くて正確。

意外にも姿勢が良くなり、よりエルゴノミックな感覚

ブラウザのスクロールが iPhone / iPad の感覚でスリスリできるのは思ったより快感で読みやすい (ただしマウススクロールの方が早い)。

また、初等教育で養った文字を書く体勢を体が覚えており、ペンを持つと自然と姿勢が良くなる。猫背なのでこれまでテレワーク中 気付けば丸まっていたが、ペンタブ利用だと正しく座れている。これはかなり嬉しい誤算。

自然と背筋が伸びる

キーボードとの行き来がかったるい (慣れで改善できるか?)

マウスの相対座標に対しペンタブは絶対座標。

キーボードとペンタブを往復する作業 (文章を書きながらツールバーを操作など) では

  1. ペンを丁寧に置く (投げ捨てるわけにもいかない)
  2. キーボード操作
  3. ペンを取る
  4. ペンを正しい場所に持っていく(*)

の繰り返しになるが、(*) を付けたところが曲者で、マウスで言うところの「さっきポインタ置いていたところから動かす」動作が骨の髄までしみている人間にとって、絶対座標で「ポインタどこだっけ」から始まるのが中々かったるい。慣れれば変わるという話も見るので ここは 1週間ほどペンタブだけで習熟してから再レビューしたい。

マウスより精密な操作が必要 (慣れと操作で改善できるか?)

逆じゃないかと自分でも思っていたが、ペンタブのほうが厳密な操作が求められる。マウスポインタには「加速度」という概念があり、マウスを同じ 5 cm 動かすにせよ、さっと動かすかゆっくり動かすかで画面上のポインタが動く量が変わる。対してペンタブは上述の通り絶対座標なので実質「加速度はゼロ」だ。

つまりマウスで左下から右上までさっと動かしてバツボタンを押すようなシーンでは

  • 左下から右上までは荒く素早い動き
  • 右上の範囲内でバツボタンにカーソルを合わせるときはゆっくり緻密な動き

と無意識に使い分けて「早く正確に」操作ができていた。ペンタブでは急ごうがゆっくりしようがピンポイントでペンを当てないといけない。バツボタンのような小さいものを押すには指をそーっと動かさないと容易に別のボタンを誤クリックしてしまう。

これは解像度の設定を物理ボタンに割り当てるなどして操作により改善できる可能性は感じるが、慣れの問題ではないと思う。

ホイールがないのが最大の弱点

業務のほとんどを Excel / PowerPoint に費やしている文系職の視点では、致命的にここが苦しい。意識せず使っていた分、無くなると操作に詰まってもどかしいのだ。

具体的には「数千行ある Excel をザーッとスクロールして目的のセルを見つけ、数式を入力してからズームアウトして全体像を見る」という作業であれば

  • 細いスクロールバーをそーと触ってスクロール
  • セルをそーっとダブルクリック
  • ペンを一応丁寧に置いてキーボードから数式を入力
  • (参照セルをマウス操作するようなシーンではペンで座標を探す問題が再燃する)
  • ズームアウトは右下の「-」をそーっと連打
    (キー割り当てして「ズームアウト」ボタンにするといくらか楽)

と精密作業の連続になり大変だ。これがマウスなら

  • ホイールをざーっと操作
  • セルを普通にダブルクリック
  • キーボードから数式を入力
  • Ctrl + ホイール でズームアウト

とあっさりできる。これが一日十回であれば別に苦はないが、仕事上数時間ぶっ通しで複数ファイル・複数シートを行き来しながら作業するケースが多く、現状では業務ユースは難しそうだ。

キーボードだけで操作という観点もあるが、結局エクスプローラや Teams なども行き来するため根本的な原因は変わらない。PowerPoint でもオブジェクトの挿入とキャンバス内の操作を頻繁に行き来するため同様だ。

業務利用 3日目での仮結論

要は「素早く細かい」操作が意外と苦手なのがペンタブとの結論だ。逆に言うと素早くざっくりな移動と、ゆっくり精密な移動は得意だ。

Excel / PowerPoint 作業が主眼であれば、無理にマウスを置き換えようと意気込むよりもペンタブとマウスを使い分けるのが得策かもしれない。ただし数十年使ってきたマウス操作の方が当然慣れているという点も否めないので、一週間はペンタブを使い込んでみて再度レビューしたい。(逆に言うと使いこなす気概がなければ軽い気持ちでの購入はおすすめできない)

課題のスクロールは左手デバイスがあれば大化けする可能性がある。また物欲が・・・。

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追伸: 使用中の Wacom Intuos 自体のメモ

Bluetooth は安定

Bluetooth 接続での不安定性が Amazon レビューで散見されたが、イラスト用途で使っていないからか全く感じなかった。有線でも無線でも使い勝手は変わらない。

どちらかというと社用 PC (最低限のラップトップ) と 私用 PC (自作の本気スペックデスクトップ) での違いが大きかった。要は処理落ちだ。結構ドライバが重いのか、社用 PC では負荷がかかっている場面で気持ちペン先が飛ぶ感覚があった。一方私用 PC では皆無だ。とは言え業務でイラストを描かれている方の観点ではないので注意されたい。

一応無線で絵も描いてみた。絵心はさておきマウスでこれは描けまい (笑)

オフィス利用なら M サイズより S サイズか

ペンタブは当然イラスト用途で購入されているので、レビューも絵の描きやすさで描かれていた。総合的に、S サイズでは運指に対して画面で動きすぎて書きづらいので M サイズにせねば後悔するという意見が目立った。

オフィス利用で使ってみると M サイズでは画面の端から端まで移動するために腕ごと動かさないといけないシーンが多く、マウスより腕が疲れるかもしれない。

自分の場合は S サイズ相当に操作エリアを絞って運用している。これなら初めから S サイズで良かったかもしれない。「一部領域」と「全領域」をショートカットでトグルさせれば課題の精密操作が解決するような気もする。これから試していきたい。

オフィス利用でのポテンシャルはまだまだあると信じたい